音楽談義室

音楽とか文学とか完全に趣味を語るブログ

音楽談義 vol.34 毎日Pink Floyd その1『夜明けの口笛吹き』

 怠惰で三日坊主な筆者がなんとか毎日続けるにはどうするべきか。そう考えた時に一つ思いついた。

 

 毎日企画をやろう

 

 ということで、毎日Pink Floydのアルバムを一枚ずつ、しっかり聴きなおしてレビューしていくこととする。知らない人の為に簡単に解説しておくと、Pink Floydはイギリスのプログレッシブロックバンド。楽曲やアルバム全体として文学色や知的な雰囲気の漂うバンドで、アルバムセールスも凄まじい。

 

 初日の今日はThe Piper at the Gates of Dawn(邦題:夜明けの口笛吹き)を紹介しよう。このアルバムは1stであり、また一つのPink Floydが完結したアルバムでもある。この当時の中心的メンバーであるシド・バレットは薬物中毒で、ボロボロになりながらも書いたアルバムがこの夜明けの口笛吹きである。シド・バレットはこのアルバムのリリース後にPink Floydを脱退しており、シド・バレット体制のアルバムは最初で最後である。この後に大きく方向転換をして、プログレッシブロックの道を進む前のPink Floydが楽しめる。まずはリリースされた1967年当時の音楽事情を知っていると理解しやすい。60年代中盤にイギリスではサイケデリックロックのブームであった。サイケデリックロックというのはドラッグをしながら、幻覚的な様子を曲に落とし込んだジャンルである。逆再生の音を活用したり、生活音を音楽に取り込んだり、ボーカルの声がフワフワしていたりといった特徴がある。こうしたサイケブームの波乗ってにPink Floydは結成された。そして、夜明けの口笛吹きはサイケブームのど真ん中にできた流行の最先端的アルバムだったのだ。

 

 このアルバムはPink Floydファンの評価がかなり高い。筆者もキャリア全体の中でトップ3に入るアルバムだと思っている。Tr.5のPow R.Toc H.のステレオオーディオを巧みに利用したギミックや、逆再生の話し声や、急にピッチが上がる遊び心満載の曲調はドラッグに溺れた様子を見事に再現している。ちなみにシド・バレット共感覚(色に文字がついて見えるといった五感の相互作用が働くこと。大人で持っている人はごく僅か)があったらしく、そうしたことも曲に反映されているのだろう。Tr.7のInterstellar Overdriveではキーボードのリチャード・ライトの名プレイが光る。ここまで怪しげな曲調に落とし込むことのできる力量は圧巻だ。10分近い曲で、現代音楽的なアプローチだが全く聴き手を飽きさせない。最後のTr.11のBikeは一転して普通の曲…、と見せかけてかなりフワフワした曲調。歌詞も調べてもらえればわかるが、何言っているかさっぱりわからない。ドラッグのやりすぎで気付いたら路上で寝ているような人ってこんな感じなのかなぁと考えさせられる。最高にぶっ飛んだ曲だ。67年にこんなぶっ飛んだ曲を1stアルバムとして出したPink Floydの底知れぬ実力が窺える。

 

 ということで今日はPink Floydの夜明けの口笛吹きを紹介した。明日からはいよいよPink Floydの本格的なプログレッシブロックの世界へと突入していく。

 

今回のアルバム

名盤度:8

おすすめ度:5(いいアルバムだがクセが強すぎるのでいきなり勧めるには躊躇する)

 

アルバムジャケット

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