音楽談義室

音楽とか文学とか完全に趣味を語るブログ

音楽談義 vol.39 毎日Pink Floyd その6『おせっかい』

 今日は5月なのに30℃近い。暑すぎる。もうTシャツ一枚だ。あ、ちなみに下は短パンだけど、その上にブランケット。これをしないとすぐに体調崩すんでね。あと、今これ書いているのはうちの大学の初Zoom生配信授業の準備中です。なんか緊張する。

 

 さて、今回紹介するアルバムは『Meddle』(邦題:おせっかい)である。なんともユニークな邦題だが、その真相や如何に。

 

 このアルバム、前回の『原子心母』ほどではないがかなりおすすめしたいアルバムだ。『原子心母』がバンドを離れた実験音楽だとすれば、こちらはバンド体制を維持しながら実験音楽をしている。一般的には『原子心母』よりもこの『おせっかい』の方が名盤とされることが多い。一曲ずつ解説していこう。

 

 まず一曲目は『One of these days』(邦題:吹けよ風、呼べよ嵐)。この時期って変な邦題が多い気がするがそれはさておき、吹き抜ける風から一変して低く唸るベース、華麗なスライドギターと掴みとして完璧な曲である。2月にPink FloydのトリビュートバンドであるBrit Floydのライブで聴いたが、イントロのベースから歓声が止まらなかった。これほどまで緊張感のあるクールなプログレが他にあるだろうか。ちなみに、この曲はあるプロレスラーの入場曲にもなっている。

 

 続く二曲目の『A Pillow of Winds』は一曲目から繋ぎで始まる。どこか午後3時頃のイギリスのような、どんよりとして気怠げな様子が伝わってくる。ここまでの作品レビューを見てくれた方ならわかると思うが、Pink Floydの曲は倦怠感が漂っていることが多い。しかし、それにも種類があり、『神秘』や「モア』の頃とは全く違うものだ。ギルモアのアコギとエレキ目当てで聴いても美しい曲。

 

 三曲目の『Fearless』は一転して多幸感溢れるPink Floydの世界が広がる。音が上がっていく特徴的なリフはオープンGチューニングによるもの。ロジャー・ウォーターズシド・バレットから教えてもらったらしい。オープンGといえばストーンズやハワイの民族音楽のイメージだが、そうしたジャンルまで詳しいシド・バレットの底知れなさに驚く。ちなみに、曲最後の歓声はリヴァプールFCのゴール裏でサポーターが歌うチャントをサンプリングしたものである。

 

 四曲目の『San Tropez』はTotoや10ccのようなピアノが聴いた比較的耳当たりの良い曲。しかし、ボーカルはボソボソと呟くような歌い方をしており、間奏のスライドギターの浮遊感と相まって単なるポップスではないと感じさせてくれる。

 

 五曲目は『Seamus』。2分程度の比較的短い曲だが、犬の鳴き声に始まり、Pink Floydなりのブルースへのアプローチが窺えるなど、印象的な曲となっている。

 

 そして六曲目。B面すべてを使って使った『Echoes』は語ることが多すぎる。これは広瀬君のスタンドで能力は…おっと、ダイヤモンドは砕けないの話はやめよう。まずイントロから鳴る高く響くリチャード・ライトのキーボード。独特の「ピーン」という音は、彼が偶然見つけたらしい。そして曲はゆっくりと展開されていく。前作『原子心母』の『Atom Heart Mother』の爆発後に聴こえたキーボードの音と同じ音色が用いられており、リチャード・ライトは自身の音をこの時点で確かなものとしていたことが理解できる。そしてリチャード・ライトとデビット・ギルモアの気怠げなボーカルも素晴らしい。こうしたアプローチは後の作品にも影響を与えている。詳しくはそのアルバムが来た時に話すが、その時は是非この『Echoes』を聴きなおして欲しい。きっと既に布石が打たれていたと感心するだろう。そして、超大作となるとやはり比較対象は前作の『Atom Heart Mother』である。大きな違いはバンドのスケールかそうでないかである。バンドのスケールである分、『Echoes』の方がPink Floydのメンバーの演奏的なアプローチがよりわかりやすい。また、『Atom Heart Mother』はとても簡単に演奏できないのに対して、『Echoes』は比較的バンドメンバーのみで演奏できる。だから、23分を超える曲だが当時は度々ライブで演奏された。当時の演奏を調べると、ライブでのレベルの高さがわかる。序盤の気怠さから一転して中盤は緊張感あるキーボードのアプローチ。実験音楽的だが、前作よりは理解しやすい方向へ少しはシフトしている。そして再び後半は「ピーン」というリチャードの音。だんだんと音がフェードインしていく。ニック・メイスンのタム、ウォーターズの低く唸るベース、ギルモアの歪んだギター、ライトの妖艶なキーボードの音色。最後は再び気怠げなボーカルパートに戻る。クライマックスは4人がそれぞれの音をぶつけ合い、独特な緊張感と多幸感を合わせながら、徐々にそれらも飛行機の離陸のような音にかき消され長かった23分にも及ぶ曲が締められる。しかし、23分もあるとは思わせない充実っぷりは流石と呼ぶべきか。実に聞き応えのある作品だ。

 

 今回は『おせっかい』を紹介した。個人的には前作の方が好きだが、これの方が好きだと言う人も少なくない。個人的にもかなりおすすめしたいアルバムだ。実は、明日紹介するアルバムはPink Floydディスコグラフィーの中で唯一ちゃんと聴いたことのない作品です。今からちゃんと聴き込まないと。ではではー。

 

名盤度:7

おすすめ度:8(かなりおすすめ。とっかかりとしては文句なしかな)

 

アルバムジャケット

f:id:RK8823:20200511232638j:image

書き忘れたけどこれもヒプノシスです。というかPink Floydのジャケットは大体ヒプノシス