音楽談義室

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音楽談義 vol.44 毎日Pink Floydその10『アニマルズ』

 今日のアルバムタイトル、浜口ちゃいますからね。

 

 もう冒頭の言いたいことが減ってきてしまったので雑になっているのがバレバレだが、早速紹介していこうと思う。今日紹介するのは『Animals』だ。曲のタイトルにも動物の名前が使われている。だが、もちろん「わー、君は○○なフレンズなんだね!」と呑気な訳がない。それぞれの動物は社会風刺になっている。今回もジャケットが印象的なので先に紹介したい。

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 毎度のことながら担当はヒプノシス。イギリスの確かロンドン近郊にあるバタシー発電所の写真だ。イラストのように見えるがちゃんと写真である。4本伸びる煙突は4人のメンバーを象徴し、小さくて見えにくいが上空に豚が飛んでいる。発電所は近代社会の象徴とも言えるだろう。そして、飛んでいる豚の真相は後述する。

 

 曲のタイトルに使われている動物はそれぞれ、犬、豚、羊である。各々がどのような社会風刺を込めているかを紐解いていくこととする。

 

 まず犬。犬は比較的イメージ通りである。お手と言われたら手を差し出し、おすわりと言われたら座る。従順な存在。しかも、犬はよく吠える。つまり、ギャンギャン吠える(環境に文句は言う)が結局は飼い主(社会)の言いなりな資本主義社会の搾取される側を象徴している。

 

 次に、豚は一旦置いておいて羊から。英語でsheepはご存知複数形もsheepであり、sheepsとはならない。羊が3匹はthree sheepである。つまり、結局は群れの構成因子に過ぎず、替えの効く存在。もっと端的に言ってしまえば、こき使われる労働者の象徴だ。

 

 最後に豚。豚と聞いて「不潔」と答える人が多いが、実は綺麗好きである。多くのサイトではこの豚を支配者(栄養摂取でぶくぶく太っているから)としているが、個人的にはあまりにもその解釈は短絡的である。本人たちも豚を支配者の象徴としているらしいが、豚が支配者とはどうも辻褄が合わない。筆者はそこで以下のような解釈をした。豚のイメージとして「家畜」が挙げられる。つまり、飼われる側、搾取される側である。冒頭の実は綺麗好きということから、豚は「努力の割に実績が評価されず搾取される資本主義の底辺」という意味なのではないか。フロイドメンバーは否定しているが、正直自分としてはこっちの方がしっくりくるし、これから話すジャケットの「翼の生えた豚」についても合点がいく。

 

 ジャケットにおいて上空を飛行する豚はどういう意味があるのか。フロイドメンバーは「救済の象徴」としたらしいが、醜い支配者に羽が生えただけで救済とはどうも繋がらない。それよりも、「社会的成功などという虚栄に囚われず、例え評価されなくても努力する豚は正義である」と考えられる。翼とはキリスト教においては天使の象徴である。天使の羽、と言うくらいだから想像にた易いだろう。以上から、キリストの救済が訪れた時に救済される側として豚を採用したのではないかと推測できる。あくまで解釈の一つでしかないが、筆者の分析は以上である。

 

 ここからは音像について迫っていく。最大の特徴は、明らかに今までの作品よりもハードなものになっていることだ。ギターの歪みも以前より凶悪になり、ギルモアの掻き鳴らすようなスタイルが顕著に現れている。『ウマグマ』の時に「ギルモアのギターはもっと化ける」と言ったのはこのことである。テーマや作曲は実質ロジャー・ウォーターズのワンマン体制になってしまっているが、Tr.3の冒頭のキーボードから、ギターリフへの移行、それに伴うピリついた緊張感は音像越しにも伝わってくる。ハイライトはTr.4の『Sheep』だろう。この曲のギルモアのギターがハードロックそのものなのだ。しかし、同時期に活動していたハードロックバンドのギタリストと大きく違うのが、その経歴である。結果としてギルモアなりの「ハードロックへの回答」は他のバンドのギタリストでは再現不能なものへと昇華されている。特に注目すべきはアウトロのギター。ここにギルモアのギター哲学が溢れんばかりに詰め込まれている。ギタリストなら一度は聴いて欲しいし、ギタリストでなくても一度は聴いて欲しい。

 

 この『アニマルズ』は社会風刺的考察の余地、Pink Floydなりのハードロックへの回答という点から筆者がとても高く評価しているアルバムである。是非、聴き込んでほしい。比較的プログレの難解なイメージは薄く、単純なハードロックアルバムとしても十分楽しめる内容だ。次回のアルバムはあまりにも長編なので明日投稿は無理です。明後日か、下手したらもっとかかるかも。小分けにするかも。ではではー。

 

 焼酎飲んできます。

 

名盤度:10(個人的には高く評価したい!)

おすすめ度:9