音楽談義室

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音楽談義 vol.45後編 毎日Pink Floydその10『ザ・ウォール』

 さて、今回は後編だ。さっさと本編に行くぜ。

 

 ではDISC2。前回までのあらすじを簡単に要約しておこう。父親を第二次世界大戦で失ったピンク少年。幼い頃から型にはまった教育現場の大人達や、過保護すぎる母、飛び交う戦闘機の下で育ち、徐々に壁を作っていく。青年になったピンクは恋人に捨てられ発狂する。そして外界との間に壁を作り、元の世界と断交するのであった。

 

 改めてDISC2を見ていこう。まず一曲目は『Hey You』。いざ壁で他者との関わりを断つと、そこは本当の孤独。耐えかねたピンクは壁の中から訴えかける。しかし、自らの意思で築き上げた壁はあまりにも高く厚いものである。前半の緊張感あるアルペジオ、後半のディレイを多用したソロとギルモアのギターが痛いほど突き刺さる曲だ。Tr.2は外へと問いかけ続ける曲。アコースティックギターアルペジオと、バイオリンの音が悲壮感を際立たせる。

 

 そしてTr.3の『Nobody Home』。これが本当に名曲。頼むからこれだけは聴いてほしい。いつ聴いても涙が止まらない。ウォーターズのボーカルと儚げに鳴り響くピアノ、彩るストリングが美しい。本当に素晴らしすぎる。これを聴くためにこのアルバムを聴くくらいだ。もう一度言う。

頼むからこれ聴いてくれ

歌詞の内容も素晴らしい。「電話しようとして受話器を掴む。でも、誰もいないんだ」という歌詞。悲しくも、儚くも美しい。文才に溢れている。ホントね、聴いてほしい。マジで、何度も言うが聴いてくれ。

 

 そして次の大きな山場がTr.6のComfortably numbである。直訳すれば心地いい麻痺。意識が遠のいている主人公に医師が注射をするというシチュエーションだ。どんどん地に足のつかない意識の中、幻想的な世界観が広がる。注射によって、ロックスターピンクフロイドがステージに駆り立てられていく。サイケなサウンドととてもマッチしている歌詞だ。そして、この曲の魅力はやはりギターソロだろう。ローリングストーンズ紙などの大手音楽評論媒体でも、このギターソロはトップにランクインするレベルだ。泣きのギターソロ、とよく呼ばれるが、その理由がよくわかる

 

 Tr.8はIn The Flesh。気がついた人もいるかもしれないが、1枚目のTr.1とほぼ同じなのだ。違いはFleshの後に疑問符がつくか否か。過激な差別用語も飛び交う曲だからあまり紹介できないが、1枚目からしっかり聴いているとここでのリフレインには感動する。

 

 Tr.9はRun Like Hell。80'sのニューウェーブサウンドの先駆けは実はここなんじゃないかと感じさせてくれる。テンポよく刻むベースに、緊張感のあるカッティングやスライドギター。二人のリードボーカルの掛け合いも含めて、雰囲気すべてが完成されている。これも名曲だ。

 

Tr.12はThe Trial。ここまで壁を作っていたピンク・フロイドが、自らの行為の過ちに気がついて裁判にかけられる様子が描かれている。裁判では自らに不利になるような証言をする人たちを敢えて集め、それによって、判決は壁を壊せと出る。多くの人々の"Break the wall!!"の言葉を受けて、ピンク・フロイドの壁はついに崩壊する。

 

 Tr.13はOutside the wall。ついに終わったのだ。しかし、この曲。どこか似てないだろうか。そう、1枚目の一曲目の冒頭だ。そして最後の語りパートは不自然に途切れている。これは1枚目の最初と繋がっている。"Isn't this where…"で切れるが、1枚目の最初では"…we came in?"となっている。繋げると"Isn't this where we came in?"である。訳すと「俺らが来た場所ってここじゃなくない?」となる。つまり、壁を壊して外に出たと思っていたが、結局は外の世界もまた別の壁の中。その外も…という無限ループなわけだ。どういう意図をもってこういうギミックにしたのかはわからないが、おそらくは輪廻的な意味合いが含まれているのだろう。直線的な考えの多い西洋では珍しい。

 

 というわけで、今回はThe Wallの後半を紹介した。ながいねぇ。それでいて哲学的なメッセージも多いので、実に考えさせられる。純粋に音として聴くのもアリだし、本当に名盤なのだろう。深くよう思わせてくれる。明日はウォーターズ政権最後のアルバムの紹介をしよう。では〜ほなまた〜

 

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