音楽談義室

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音楽談義 vol.11 フライングVの火付け役、Albert King

 最近親知らずを抜いた。しっかり生えているやつだから口腔外科で切開しなくて済んだのは幸い。実は筆者は虫歯で歯を抜いたことはないけれど、歯並びの関係上もう既に上の歯を3本抜いた。なんでも顎が小さくて歯が入りきらないんだと。めんどくさいねぇ…

 

 さてさて、突然ですがフライングVってギターを知ってますか?ギターをやったことない人でもある程度想像のつきやすい形をしている



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 こんなやつ。なるほどV型だ。GIBSON社は1958年にこのギター、フライングVを開発した。元々GIBSONという会社はよく言えばクリエイティブで、悪く言えば失敗作も多いギター会社である。最近で言うと、失敗作になったFirebird Xというモデル(元々備品不良などもあったのだが)をキャタピラで破棄する動画が拡散されて問題になったり。破産申請出した会社なのにお先真っ暗じゃんっていう。このフライングVもそんなクリエイティブな会社から「既存のギターとは違った、目を引くものを作れないか」という考えから生まれた。なるほど確かに目を引く。しかし、このギターは僅か2年しか生産されずに一旦打ち切りになってしまう。その理由は以下の通りだ

1.音が扱いにくい

 GIBSONの代表的なギターのレスポールに比べて音が扱いにくいのだ。端的に言ってしまうと、上手くアンプを弄ってあげないと、下は迫力がなく、上は全然抜けないというなんとも中途半端なギターに成り下がってしまう。レスポールが低音100、中音100、高音100とすると、フライングVは低音70、中音150、高音80みたいな感じ。これが掴めないと単なる下位互換なのだ。ちなみになんでこうなるかはフライングVの形状にある。V字型の形状によって、ボディで音が分かれてしまって中々迫力のある音が出しにくいのだ。

2.ヘッド落ち

 フライングVはこうみえて、ボディが軽い。ヘッドとボディのバランスが悪いと起こること、ギターをやっている人ならすぐに勘づくであろうヘッド落ちである。立った状態でギターを持つと、ヘッドが落ちてギターのボディが上に来てしまう。一応滑り止め付きのストラップにしたり、重りをつけたりして対処は出来るが、とにかく面倒。これならレスポールで良くね?となって売れなかった。

3.奇抜なデザイン

 意外に思うかもしれない。セールスポイントがコケたのだ。奇抜すぎるデザインは時代を先行しすぎていた。結果としてギターユーザーにはあまり受け入れられなかった

 

 そんな理由でフライングVはお蔵入りとなった。最初の二年間で作られたフライングVは高級なコリーナという木材を使用していて、今ではびっくりするほどの価格で取引される高級品だが、当時は見栄えという点だけで、店の看板に掲げられているだけということも少なくなかった。勿体無い。本当に勿体無い。どれくらい勿体無いかというと、絶対に当たる3億円の宝くじを「買わない俺ってかっこいい」とかっこつけて逆張りして買わないくらいには勿体無い。…例え下手くそだな。

 

 さて、前置きが長くなってしまった。今回の主役はそんな不遇なギター、フライングVを再評価させたギタリストである。その名もAlbert KingB.B.King、Freddy Kingと並んで三大ブルースギタリストと呼ばれる1人だ。あ、ちなみに三人に血縁関係はないよ。そんなAlbert KingフライングVを使い始めると、評価は一転した。よくギターやる人の間で「フライングVって激しいロックの音も出るけど、意外にカントリーやブルース向きでもあるよね」と言われているのはAlbert Kingのお陰じゃないかな。さぁ、Albert Kingの美しくも遊び心のある曲たちを紹介しよう

Born Under a Bad Signという曲。甘ったるいトーンに豊かなサスティーンのギター。響きがよいのはやはりコリーナを使っているからだろう。

 

 ここで、Albert King独自のギターテクニックを見ていこう。彼はピックを使わない。全て指引きだ。更に左利きなので左利き用のギター…と思いきや右利きのギターを左利きとして持って使っている。所謂ジミヘンスタイルというやつだ。最も、ジミヘンと同時期かそれより前に活躍していたギタリストだからこの呼び名は若干語弊があるがそこはさておき。このスタイルだと低音弦が下に、高音弦が上に位置するようになる。これは普通のギターとは逆である。これによって歌と歌の間の音が高音に集まりやすいというのもある。そんなところを踏まえてもう一曲。

I'll Play The Blues For you。親指を高音弦に当ててアタックの強い高音を生み出している。先ほど書いた通り抜けが悪いギターなのだが、それがかえっていい味を出している。

 

最後にもう一曲

Good Time Charlie。イントロのフレーズの終わりらへんで低音弦をスライドするところがあるが、Albert Kingがよくやる手癖である。高音弦を弾ききって最後に低音弦を親指で触れてスライドさせる。普通とは逆に弦を張っているからこそのフレーズである。

 

という感じでこのブログで初めてブルースを取り上げてみた。次回は80年代の英ロック、所謂ニューウェーブと呼ばれるジャンルを象徴して、最近フジロックにも出たあのアーティストを紹介したい。じゃ、お元気で。