音楽談義室

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音楽談義 vol.24 亡くすには惜しすぎた才能、BOOM BOOM SATELLITESについて

 今まで沢山の惜しまれた「早すぎる」死があった。フジファブリックのボーカルの志村さん、ヒトリエのボーカルのwowakaさん、ミッシェルのアベフトシさん、初恋の嵐のボーカルの西山さん、プリンス、The Muffsのボーカルのキム・シャタック、The Whoのドラムのキースムーン、Quite Riotのギターのランディローズなど、挙げればキリがない。今回はそんな惜しまれた「早すぎる」死の中でも、日本のロックシーンの超新星だったBOOM BOOM SATELLITES川島道行さんを紹介したい。

 

 BOOM BOOM SATELLITESはデビューから異質だった。日本のバンドとしては異例のベルギーのレーベルからデビュー。以後、ヨーロッパで爆発的な人気を獲得し、日本に逆輸入されたバンドだ。歌詞はすべて英語、終始鳴り響くシンセサイザーやEDM系統の音はロックバンドとしての常識を大きく覆し、話題となった。そんな彼らの象徴的な曲を一曲ここで載せておく。敢えて有名曲よりもこの曲が好きなので、ニッチな選曲を。

ニコニコしかなかったので、悪しからず。シングルの「Easy Action」のRemixだ。ドラムンベース故に歌い出しがかなり後半で、原曲よりも圧倒的にテンポが早い。歪んだギターに終始飛び交う電子音と、流れるような、でもしっかりと突き刺さる川島さんのボーカル。どれをとっても一級品といえる。

 

 BOOM BOOM SATELLITESは日本に来てからもその人気を絶やさず、どんどんリスナーを増やしていった。日本のダンスロックの先駆者として、オーディエンスを大いに盛り上げる曲を多数披露した。そんなライブで盛り上がった代表曲をここで一曲。

Kick it out。ストップアンドゴーが効果的に多用され、ライブハウスに一気に熱狂の渦を作った曲。川島さんのフライングVもかっこいい。非常に画になる。叫ぶようなボーカルも興奮を加速させる。

 

 そんな名曲達を産み出したボーカルギターの川島さんだが、昔から脳腫瘍を患っており、何度か手術を受けていた。2015年にライブ活動がこれ以上厳しいと判断されると、2016年にこれから紹介する「Lay your hand on me」をもって活動を終了するという発表がなされた。そんな最期の曲がこれだ。

自然と涙が出てくる。PVに出てくる幼い女の子は川島さんの実の娘だ。これから死を迎えるはずなのに、こんなにも生きること、生命の尊さを伝えてくれる曲が他にあるだろうか。脳腫瘍が悪化し、もう歩くこともままならず、歌詞すら覚えられない状況でありながら、それでも川島さんのボーカルは清涼感があり美しい。最期にこんな名曲を用意してくれた川島さん、そしてボロボロの川島さんに一生懸命歌詞を一言一句何度も教えた中野さんに心から敬意を示したい。

 

 川島さんはその後、2016年10月9日に亡くなった。他のミュージシャンと違い、急死でなかったから遺作を残すことができたのが唯一の救いだったかなと思う。追悼ライブにも多くの人が参加し、早すぎる死を惜しんだ。川島さんの死を忘れぬよう、いつまでもBOOM BOOM SATELLITESの曲を心に刻もうと思う。